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2025年、京都・清水寺で発表された「今年の漢字」は**『熊』**(くま)でした。
この一文字が選ばれた背景には、私たちの生活を脅かす深刻な社会問題から、新たな時代の幕開けまで、
2025年という年の多面的な姿が映し出されています。
今回のコラムでは、この一文字に込められた意味を紐解きます。


2025年「今年の漢字」:『熊』が語る日本の現在地

2025年12月12日、清水寺の舞台で森清範貫主によって力強く揮毫(きごう)されたのは、**『熊』**の一文字でした。
全国18万票を超える応募の中から1位に選ばれたこの字は、単なる動物の名前を超え、
私たちが直面した「環境」と「変化」の象徴となりました。

1. 人里に迫る「野生」の脅威

最も大きな理由は、全国各地で相次いだクマの出没と人身被害です。
これまでは山間部の問題とされてきたクマの存在が、2025年は市街地や住宅街にまで及び、過去最多の被害を記録しました。
ゴミ捨てや通学路といった日常の中に潜む「非日常の恐怖」は、多くの日本人に深い緊張感を与えました。
これは単なる個体数の増加ではなく、放置された耕作放棄地の拡大や温暖化による山の変化など、
人間と自然の境界線が崩れ始めたことへの警鐘とも受け取れます。

2. 惜別と期待の「パンダ(熊猫)」

一方で、この字には温かい、しかし少し寂しいニュアンスも含まれていました。
和歌山・アドベンチャーワールドからのジャイアントパンダ(大熊猫)たちの中国返還です。
長年、多くの人々に愛されてきた「熊」たちの旅立ちは、一つの時代の区切りを感じさせました。
恐怖の対象としての「クマ」と、愛される存在としての「パンダ」。
同じ漢字の中に同居するこの対照的な感情が、今年の世相を複雑に彩りました。

3. 社会を揺るがした「米」と「高」の影

僅差の2位には**『米』、3位には『高』**が続きました。

これらの上位候補を抑えて『熊』が1位となった事実は、私たちが政治や経済という「人の作った仕組み」以上に、
「自然界からの抗えない変化」に最も心を動かされた一年であったことを物語っています。


結び:自然との距離を問い直す

『熊』という漢字の下部にある四つの点(れっか)は、もともと「火」を表します。
野生の力強さと、時にすべてを焼き尽くすような自然の厳しさ。
2025年は、私たちが自然の一部であることを嫌応なしに突きつけられた年でした。

この一文字を、単なる「怖いニュースの記憶」で終わらせるのではなく、来たる2026年に向けて
「自然とどう共生していくか」を考え直す、大切な道標にしたいものです。

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